○かやぶき民家の棟は家の顔?

世界遺産に登録されている岐阜県白川郷の屋根は、よく手を合わせたような形から合掌造りと呼ばれ、屋根裏の大きな空間では、かつて養蚕が盛んに行われていました。

かやぶき屋根に用いるのは、ススキや葦、稲藁など、身近にある材料です。また、茅(かや)とは、屋根を葺(ふ)くために用いるそれらの草の事を言います。 茅は、高温多湿な日本の気候風土の中で、特に優れた機能を発揮します。

材料に油が含まれているため、雨をはじき、雨音を吸収するので、家の中はとても静かです。また、草を材料として使っているため、風通しが良く、特に夏は涼しく過ごすことができます。何処にでも自生し、材料費の掛からない、かやぶき屋根の民家は、日本人の暮らしに最も適した屋根材として長く受け継がれて来たのです。


○まず最初に、屋根の最も高い部分、棟に注目しましょう。

棟に草や花、そして木が生えている家があります。これを「クレグシ(クレは土、グシは棟)」「芝棟(しばむね)」といい、植物の根や野芝を張り巡らせることで、屋根や棟を補強しているのです。 今も青森県三八地方や岩手県北に見ることが出来る。

屋根の天辺にある棟は、建物を守る最も重要なところです。屋根の面が交わる部分を、保護し、雨漏りを防ぎます。軒先の刈り込みと棟仕舞は、かやぶき職人にとって、腕の見せ所となる仕事です。

茅は軒から噴き上げて棟で収まります。一番高い所にあるので工夫が凝らされる。その気候風土に対応しないといけない。使う材料はその地域の暮らしを支えている材料が多く用いられて来た。結果としてその地域の気候風土、あるいは歴史や文化を反映させた形を地域で作ってきたということです。棟は屋根の顔と言われます。その顔を見ればその地域が何処であるかが解ります。 表情豊かな棟が各地で作られてきました。

全国で比較的に広く見られるのが、竹を編んで、屋根にかぶせた「竹簀(たけす)巻き」です。木を交差させてつくる「置千木(おきちぎ)」。木材が豊富な山間部に多い棟です。

合掌造りや福井県の角屋造りの屋根の天辺に茅の束を載せ、突き出た木材に固定する「笄棟(こうがいむね)」は、「おいらん」の髪型を思い起こさせたり、カンザシを連想させます。

筑波山のふもと、茨城県石岡市や袋田の滝に近い、茨城県大子町とその周辺にも多くのかやぶき屋根が点在します。

江戸時代後期に建てられた○○邸には、豪華な造りをした棟「竹簀巻き」があります。

この地方で豊富に採れる真竹を使い、高さ1メートル近くもある棟を作りあげました。竹の弾力性を活かした複雑なデザインです。さらに、その上には、棟に献上する木「けんとうぎ」という屋根を葺くために用いた材料への感謝の気持ちを表すものが置かれています。

この地方では、「棟」の両端にも飾り付けを行います。この部分を、「キリトビ」と呼びます。多くのキリトビには、「竜」という文字が刻まれています。 竜という文字が多いのには訳が有るようです。

かやぶき屋根の民家にとって、一番怖いのが火なんです。竜は海の中や地中、天空に住み、雲や雨を自在に操り水を呼ぶんです。そのため火災除けに竜の文字が彫りこまれていたり、煙り出しの部分には水の字を書いたりしました。

キリトビには、ここに暮らす人々のさまざまな願いが込められてきました。また縁起物の松竹梅を入れ、「家運隆盛」の願いを込めました。かやぶきの屋根と、美しい調和を見せる棟は、まさに、家の顔と言える部分では?ないかと思います。

次は、軒に注目してみましょう。

高い天井を持つかやぶきの屋根は、軒に向かって大きくせり出し、美しい直線を作ります。軒は、屋根を葺いたあと、職人の手できれいに切りそろえられます。

ある、かやぶき職人(茅手)が話す。一番目立つ所なので線を出すとか、そういった経験が必要になってくるんですけども、そういったことに気をつけながら、こんな軒なら線がきれいに出るかどうかとか、こう曲線のような屋根だと、その曲線がいかにきれいに見えるかとか、そういったところが職人としての経験とか感性とか、そういうものが影響してくるというか。屋根も、同じ屋根が無いと思うので、それに対してどのように違和感無く葺き上げていくかとか、そういうことが作業として難しいところだと思いますねと話す。

職人の葺き方によって軒の表情も大きく変わるのも間違い。

○「軒の断面に拘りがある」

江戸末期に建てられた、茨城県石岡市の○○邸。

この家の母屋には、他のかやぶき屋根にはない特別な軒の装飾があります。厚さおよそ1メートルもある、深くせり出した軒。そこには、色の違う茅が交互に積み重ねられ、層を作っています。

黒が入るとすごくきれいに見えます。それで考えたのが、軒付けに一番下はわらでその次にこういう古茅(ふるかや)って言うのを使ったらば、白黒で装飾的なことを考えて、この古茅をわざわざ黒いのを使う。装飾性の強い、芸術の粋まで達する軒先の葺き方である。

さらに、軒にひしぎ竹を割って埋め込み、豪華さを出しました。古い茅を市松模様の並べて葺いたり素晴らしい手仕事を見ることが出来ます。

特に?茨城県人の性格として、うちの職人はこんな棟仕舞いや軒飾りが出来るとか、うちの職人は、また別な葺き方や棟仕舞が出来るとか、生活に余裕があると、どうしても良い職人を呼んで来て、あの家には負けない様に豪華の葺き上げてくれ!何て競争心も有ったのでは?無いだろうかと考える。

職人達は、自分が手がけた軒に飾りを施した。こちらの家の軒には、家主の幸福を願って「鶴と亀」 軒は、屋根を葺いた職人が、仕上げの美しさを際立たせるところ。その断面に、職人たちの頑固な拘りが隠されています。


○築数百年のかやぶきの民家の天井裏を見上げると、独特の色と艶を持つ、重厚な木の骨組みが見えます。

民家の天井を見上げた時、太い丸太が見えます、その丸太が構造上の一番大事な部分で、その丸太は建築当初の時代から現在まで残っている。その梁や小屋組みの色合い、そう言う所を見ていただきたいと思います。屋根裏の木材は長年煙でいぶされることで黒い艶を放ちます。

屋根に葺かれる茅の重さは、大きさにもよりますが、数トンにもなり、その重さを受け止めているのが「さす組み」と呼ばれる三角形の屋根組みです。 斜めに組まれた「さす」と呼ばれる木材は、水平に置かれた梁(はり)に45度の角度で固定されています。梁が、「さす」から伝わる重みをしっかりと支えているのです。さらに、屋根裏には、釘はいっさい使われていません。丸太や竹は釘ではうまく固定できないからです。

代わりに使ったのは縄です。「いぼ結び」という特別な結び方です。この「いぼ結び」は、一度結ぶと、自然に緩むことはなく、硬く締まって行くと言われます。

囲炉裏や釜場の煙に数百年さらされ長年経つと、もう針金以上に稲わらが硬く締め付けられるからもう絶対緩むことは無いと言います。いぼ結びじゃなければ、普通にただ結わいただけじゃちょっと無理だと言う。

○囲炉裏(いろり)から出る煙は屋根裏をさらに堅固なものにします。煙に含まれる、有機化合物が縄に少しずつ染み込み、結び目を固めていきます。また煙には、防虫効果もあります。そのため、虫がつかず、茅が長もちします。煙にいぶされた天井の竹は、小豆色に変わり、美しい光沢を帯びるようになります。

こうした竹は、スス竹と呼ばれ、竹かごなどの工芸品の材料として重宝されてきました。最高のスス竹を使って編み上げられた竹かご。時の重みを感じさせる深い色合いです。しかし最近では、このスス竹が高価に取引きされています。

煙にいぶされ続け、黒い艶をまとった屋根裏の小屋組み。長い間、家族の営みがあり、その屋根の下に人が生活して来た事で生まれる飴色です。

※生活の知恵が詰まった、日本のかやぶき屋根の民家達はは、日本人の持つ「美意識」も一緒に育んで来たのです。




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